地方経営者の力になりたい!ブランド力や資本力に頼らないプロモーション戦略で、中小企業を元気に

株式会社グローカル WEB集客・販促事業部事業部長  加藤英里さん

『地方創生を進めよう!』『地域活性化に取り組もう!』昨今、トレンドワードのようにそう叫ばれることが増えています。しかし、地域を活性化するという抽象的な言葉の本質を捉え、実際に貢献できている企業はどれほど存在するのでしょうか?

株式会社グローカルでは、地方の中小企業のWeb集客支援や経営コンサルティングをおこなっています。「地域を支えているのは地元の中小企業。彼らを支援することにより、地方の経済活動は活性化していきます」と、事業部長の加藤さんは言います。リクルートからグローカルに転職した彼女に、入社当初の課題、それを乗り越えた方法、そして今後の展望について伺いました。

■プロジェクト登場人物

加藤英里さん
1983年生まれ。北海道大学卒業後、株式会社リクルート北海道じゃらんに入社。じゃらんの媒体を活用した地域プロモーションを提案する地域振興部門の立ち上げから推進まで9年間従事。エリアプロモーション企画立案、ご当地グルメプロデュースなどの他、講演やセミナー講師も務める。2014年5月に株式会社グローカルへ入社。行政・観光協会をはじめ、宿泊施設やレジャー施設などのWEB集客コンサルティングを行っている。

■はじめに

30代が挑戦する最後のチャンスだった
日本全国の頑張っている地方企業に貢献する仕事へ

ーまず最初に、グローカルに入社した経緯を教えていただけますか?

私は大学卒業後に株式会社リクルート北海道じゃらんに入社しました。そこで、地方活性化の事業に取り組んでいたこともあり、地域活動を支援する仕事が天職だと感じるようになりました。地域に元気がないから盛り上げたい、自分達の子ども世代に地域を受け継いでいきたい、そんな真摯な思いを持っている人達と関わるのが楽しかったんですよね。

この仕事を大好きな北海道で一生やっていきたいと思っていました。なので、北海道を出る気も全くなくて。

入社して9年が経った時、グローカル代表の浅野に出会いました。彼と話していく中で、自分の思いに気付かされたんです。リクルートは新陳代謝が著しい会社です。40代、50代になったら会社を出るときが来るでしょう。会社の看板がなくなった時、自分の力のみで地域に携われる仕事ができるのか……答えは「No」でした。

将来のことを考えたら、今行動しないといけないのでは。30代の今が、最後のチャンスなのではと。代表と話していくことでそんな思いが喚起されました。そしてまさに自分の地力をつけられる環境があったグローカルへの入社を決断しました。

ー代表との対話で思いに気づいたのですね。現在はどんなプロジェクトを行なっているのでしょうか?

地方企業への経営のコンサルティング、WEBを活用した集客支援を行なっています。

主なクライアントは行政機関と民間企業です。民間であれば、旅館、動物園、病院、弁護士事務所、ラスク屋さんなど、業界を問わず支援しています。

クライアントとは顧問契約をして、月に1回その企業を訪れます。そこで、WEBマーケティングの施策をすり合わせ、確定したものを実際に運用し、PDCAを回していきます。

ー現地に訪問するんですね。日本のどの地域までアプローチされているんでしょうか?

日本全国ですね。現在は、北は北海道から南は鹿児島まで。月の半分は出張に赴いています。ビジネスモデルとしては特定の地域に絞った方が効率的かもしれません。でも、私たちは日本全国の頑張っている地方企業に貢献したいので、依頼があればどこにでも行きます。

■課題

地域のブランド力や資本力に頼らないプロモーションをする
常識と違う広告施策に、多くの企業は不安を口にした

ー入社してから携わったプロジェクトで課題はありましたか?

私たちのコンサルティングは「潜在ニーズ喚起型施策」です。一般的な手法は「露出施策」としての広告が中心なので、クライアントの意識を露出から潜在ニーズを掘り下げていく施策に転換させることが大変でしたね。

ーその「潜在ニーズ喚起型施策」と「露出施策」とは具体的にはどういうものでしょうか?

一般的な地域の露出施策では「うちの地域は最高ですよ、温泉もあるし、自然も豊か、ご飯も美味しい、だからおいでよと!」と、いいところを全面的に打ち出します。そうなると地域のブランド力による勝負になります。しかし、その土俵では京都のような大規模観光都市には勝てません。

また、プロモーションの手法として、CMを打つのも代表的なやり方ですが、それには広告費がかかるため、露出力は資本力にも比例します。つまり、従来のやり方だと「今度の長期休みはどこに旅行しようか」と悩んでいるターゲットを獲得するために、ブランド力と資本力で戦い合うんです。

私たちはそうではなく、「どこにも行きたいと思っていない人」をターゲットにします。

ーどういうことでしょうか? どこにも行きたいと思ってない人をターゲットに……。

例えばですね、最近親孝行できてない30代の男性サラリーマンがいるとします。その人に「最近、親孝行できてますか? できてないのでは。親が喜んだことを振り返ると、同じ空間で同じ時間を過ごしたことではないでしょうか。そこで、自分の家族と親をつれて三世代旅行に行ってみてはいかがでしょう? ちなみにうちのエリアでは、三世代でこんなことが楽しめますよ」と、最後に自分たちの地域や商品、サービスを案内するんです。

親孝行をしたいという潜在的なニーズに気付かせて、ニーズの解決策としてクライアントのサービスを提案するんです。これが「潜在ニーズ喚起型施策」です。

ーなるほど、従来の露出施策とは別のフィールドで戦っていこうと。

そうです。我々はブランド力や資本力に頼らない、潜在ニーズ喚起型アプローチを実行しましょうと、地方企業に訴えました。
すると先方は、「概念的にはわかります。でも本当にできるのでしょうか?」と不安を吐露されることが多くて。最初はスムーズに意思決定をしてもらうことができませんでした。経営者の意識改革が最初の課題でしたね。

■変化

合コンを例にだして、説得を開始!
アピールポイントを押し売りするA君と、理解とメリット提示をしてくれるB君

ーそこからどのように意識改革をおこなったのでしょうか?

丁寧に説明していくしかなかったですね。潜在喚起型アプローチ方法を感覚的に理解してもらうために、ときには例え話を用いることもありますね。

ーもし、差し支えなければどんな例え話を?

合コンによく例えていました(笑)。

「あなたが合コンに行くとします。相手にA君とB君という2人の男性がいます。
A君は『俺は慶応を卒業して今は大手広告代理店にいる。年収は1000万円で休日はフェラーリで出かけて、芸能人の友達もいるんだよ。こんな俺ってどう?』とアピールしてきます。

一方Bくんは『●●さんはお酒好き?』という質問から始まり、好きなお酒の種類や、そのお酒を取り扱っているお店の話をして、あなたとの対話を進めてくれます。

どっちがモテるでしょうか? 断然Bくんですよね。

しかし、あなたたちはA君になっています。『世界遺産もあるし、郷土料理も美味しいし、俺のところに来ない?』と。合コンも、週末の旅行も、意思決定をするのは同じ人間です。合コンでB君を選ぶのに、お出かけ先でA君を選ぶのはありえません。

人は自分のことを理解してくれて、自分にメリットがある提案をしてくれる会社や人を好みます。それを集客やプロモーションの現場でも適用することが、他地域や他社との差別化になります。そうすれば勝ち目がありますよ!」と。

このように、合コンや日常生活に例えてクライアントに「潜在ニーズ喚起型施策」を説明していました。

■結果と今後

地方企業の経営者は孤独
そんな彼らの右腕的存在になりたい

ー合コンに例えると感覚的に理解できますね(笑)。説明の結果はどうだったのでしょうか?

結果的に、その地域のイノベーター的な企業、地域を代表する企業から採用されていきました。イノベーターの人達は実績云々ではなく、原理原則で考えます。「今まで取り組んだことはないけれど、原理原則論で考えたら結果は出るはずだよね。じゃあやってみよう」と。

現在は、そこでできた実績によって、それに続くような企業をクライアントとして取り込めるようになっていきました。

営業もしやすくなりましたし、お問い合わせも増えていますね。

ー実際の潜在ニーズ喚起型プロモーションの成功例を教えていただいてもよろしいでしょうか?

そうですね。いろいろありますが、例えば和歌山県和歌山市の温泉旅館のPRを事例に紹介しますね。

和歌山市は、和歌山城などの観光スポットが有名ですが、それに比べると和歌山市内に温泉があるというのはあまり知られていません。しかし和歌山県内には「高野山」と「熊野古道」という世界遺産があり、そこにはたくさん人が来ます。その人たちの潜在ニーズを和歌山市内の温泉旅館に宿泊するということに結びつければ、旅館の予約をしてくれる人が増えるのではないかと。ランディングページを活用したWEBプロモーションを進めました。

通常、旅行業界においてリスティング広告を使い顕在ニーズに対してアプローチした場合の平均クリック単価は、200〜300円ほどです。しかし潜在ニーズへのアプローチであれば、競合他社が狙っていない分、アプローチする時のコストが低いんです。その結果、1クリック11円でターゲットに対しアプローチすることができました。集客の自走化を実現できた、1つの好例ですね。

ー取引先も拡大して、プロモーションも成功されたのですね。最後に、加藤さん自身の今後の目標を教えください。

そうですね、地方の経営者の頼れる存在になりたいと考えています。地方の中小企業の経営者のお話を伺っていると、経営全般の課題に対して、社長1人で対応しているケースが非常に多いと感じます。実力のある社員はいても、経営者と二人三脚で経営を行う参謀的ポジションがいないことが、地方の企業には多いのではないかと思います。

そのためには私も、経営に関するマルチな知識を取得しないといけません。今はWEBマーケティングに特化していますが、今後は人事や採用などの組織面も自分でできるようになりたいです。「困ったことがあればとりあえず加藤に相談してみよう」と思ってもらえるような存在になることができればと思います。会社としても対応できる案件の幅を広げることで、日本の地方活性化により貢献できればと思います。