男女区別なく”トライ”できる環境を作り、新しい価値を生み出す。 株式会社リクルートキャリア アドミニストレーション統括室 執行役員 浅野和之 氏

 

今後、少子高齢化が進み、経済低成長期を迎える日本では、このまま何もしなければ「働きたくても、働けない」人が激増すると言われています。いまや雇用課題は、社会の重要テーマの1つになっています。

そこで、今回は「人」を軸にした事業を行う日本のHR業界のリーディングカンパニーである株式会社リクルートキャリアの執行役員 アドミニストレーション統括室の浅野和之 氏にお話を伺いました。同社が担っている事業への思い、そして女性が活躍できる職場環境、時代に合わせた働き方の変化などをご紹介します。

受け継がれるリクルートのDNAから生まれたビジョン・ミッション

ーーリクルート=人材ビジネスのリーディングカンパニーというイメージが強くあります。その中で「働く喜び」というキーワードに紐づいたビジョン・ミッションが生まれた背景からお知らせください。

僕は1993年リクルート人材センターに入社しました。そこから今に到るまでの組織の大きな変換点のひとつが2012年の事業統合です。新卒・中途採用メディア領域、人材紹介領域、アセスメント領域の3社が1つになって、株式会社リクルートキャリア(以下、RCA)に商号変更しました。

「働く喜び」というキーワードを掲げたのは、マーケットトップシェアの僕らがこれから何を目指すのかということで言語化したのがきっかけで、RCAの軸でもあるのでこの話だけで30分以上語れる内容なんだけど(笑)

ーー ”ひとりでも多くの人たちが「働く喜び」を膨らませ、「働く喜び」の輪が、新たな活力を生み出している社会を創りたい” というビジョンにはそれだけ想いがこもっているんですね。

そうですね。3社を統合したのは、雇用という領域から逃げないというメッセージであると同時に、これから少子高齢化や経済の低成長に直面する時代にRCAが何に貢献できるのかという問いに答えていく形でビジョンを掲げました。

ーービジョン・ ミッションを社員に浸透させるのはどの会社でも課題に挙がると思いますが、RCAではどうされているのでしょうか?

字面だけでは伝わらない、議論のプロセスや背景、それに込めた想いなどを、新しく入社してくれた人たちにまずお伝えしています。RCAは毎月1日が入社式なので、その後の研修の最初のコンテンツはビジョン・ミッションの説明です。

また、ナレッジをシェアする場として「VISION MISSION AWARD」を設け、ビジョンやミッションを体現している社員の取り組みにスポットを当てて表彰と内容のシェアをしています。これは、営業担当であればクライアント企業に向けてかもしれませんし、社内の働く環境を良くするバックオフィスのメンバーも同様に選んでいるので、社員同士の大きな刺激となっています。

人は誰もがかけがえのない持ち味を持っている

ーー ビジョンとミッションの軸があるところがRCAの強さでしょうか?

企業としてのブレない軸ではあり、強さになっていますが、社員に日々の仕事で大切にしてもらっているのは、Value と人材観です。

ーー Valueと人材観、とは?

ビジョンやミッションは、3カ年事業計画などとは違い、30年先、50年先というような遠い未来に向けてどういう発射角度で狙いを定めるかという内容です。メンバーからすると日常からは少し遠い内容になるので、一人ひとりのこだわりどころとして設定したのがValueと人材観です。例えば上司との面談時に次の半年でどのValueに注力していくのか、どんなテーマに取り組むのかなどを会話します。評価ではなく、人材開発として位置づけています。

RCA Value

■社会起点
できるだけ広く・深く・長い視点で、「何のためにやるのか」という目的を描く

■圧倒的な当事者意識
何ごとも我が事としてとらえ、自らの責任で考え行動する

■昨日を超える
昨日を超える一歩を踏み出し、結果にこだわって最後までやり遂げる

RCA人材観

人は誰もがかけがえのない持ち味を持ち、成長し続けることができる。私たちは、どんな時でも、その一人一人の可能性を信じ、期待し続ける。

ーー 人材観はRCAの社員にはもちろん、どの会社にも必要な考え方だと感じます。

人の可能性を信じて期待するというのは非常に重要な考え方だと思っています。

リクルートのビジネスを僕なりに一言で表現すると「人に選択肢を提供すること」だと考えています。意思決定の場面において誰かに何かを決められるのではなく、自分で決めることが重要であり、それが人の内発的動機を生み出すエネルギーになると信じているからだと思っています。

これをRCAのValueや人材観のベースにしています。

なぜリクルートは、女性の力を上手く活かして成長できているのか

ーーRCAのValueや人材観は男女関係なく適用されているのでしょうか?

もちろんです。リクルートには、そもそも男性女性という区別がありません。だから、自分で決めたことにはコミットしてもらう代わりに会社としてそれを支援していくというカルチャーです。

ただ、女性には、妊娠、出産 などのライフイベントがありますよね。RCAでも社員全体の6割が女性なので、そのライフサイクルに対してケアをしていく必要がありますし、会社の理解がないと本人もモチベーションが続かないですよね。そのため在籍中は自分の選んだステージで一生懸命働ける環境を整えますし、子育てなどで一時期離れていてもまたRCAに戻ることは当たり前という感覚です。その根底には、やはり本人が何をやりたいのかという意志・意欲があり、会社として様々な選択肢を提供するということに尽きると思っています。

ーーその上で、RCAさんは福利厚生や制度が充実していますよね。

2012年の事業統合によって、もともとグループ会社だったとはいえ3つの会社の人事制度を1つに作りかえるのはパワーを要しました。そのため、まずは制度などの箱を作り、現在も状況に合わせて1つひとつ整えているところです。例えば、アニバーサリー休暇制度は、有給休暇の取得促進を目的に、年1回連続した4営業日以上の有給休暇を取得すると、手当金6万円を支給しています。他にも、育児・介護中の社員に対し「育児・介護」と「個人のキャリア形成」の両立を目的に時短勤務制度を設けたり、在宅勤務中の社員は、男女合わせて約200名、リモートワークを実践している社員は約2000人います。

ただ、制度は重要ですが、それは成長ステップの1つであり、本人が自分らしく活躍する「機会提供」という考え方で運用しています。

ーーRCAのキャリアに関する考え方ではいかがでしょうか?

CDC(Career Development Cycle)という社員の成長・キャリアを支援する制度があります。人事考課は年に2回ですが、様々な場面で上長とメンバーが、会社からの期待や要望だけではなく、自分自身の現状の強みや課題を正しくとらえてこれから何を実践していくかを話し合っています。キャリアのプロフェッショナルであるRCAだからこそ、社員一人一人が「かけがえのない持ち味」を活かせる環境づくりを心がけています。

社内外でメッセージを発信していくことで「働く喜び」は膨らんでいく

ーーリクルートといえば目標達成意欲の高い”営業会社”というイメージもありましたが、制度や働く環境面を整えていることは今回の取材を通じて伝わってきました。

そうですね。リクルートといえば営業会社として常に数字の達成を目指す組織というイメージを持たれる方もいるかもしれません。ただ、リクルートの中では数字をどうこう言う前に、クライアントやユーザーに対して何ができるのかという会話の方が圧倒的に多い。社会や顧客、社内で働く人がもっと良くなるためには何が必要か、何ができるかを考えています。青臭いですよね(笑)

リクルートホールディングス全体では、エンジニアを増やしてサービスや社内の働き方にもテクノロジーを活用する大きな流れがありますし、上場したことで世の中や株主から要求されいることも変わってきています。

ーーその中でも変わらないコアになっているのが「働く喜び」を膨らませるというキーワードでしょうか?

業界のリーディングカンパニーとして僕らに突きつけられている課題は、今までのやり方を超えていかないとイノベーションは起こせないこと。その上で、新たに加わるメンバーには今までのやり方にこだわらず新鮮な風を吹かしてくれることにも期待していますし、会社としても社員がトライできる環境を常に意識して作っています。トライというのは、今までのようにマーケットの規模を見てチャレンジしようといった大きいことだけではなく、スモールステップで新しいことを生み出していけるようなトライを大事にするということです。もちろん、そこには男性も女性も関係ありません。

その上で、RCAとしてはメディアや人材紹介などいろいろなソリューションを活用し、個性が活かせる仕事や文化のある会社で働くきっかけを作っていきたいと思います。そして、このメッセージを社内外で発信することで「働く喜び」をもっと膨らましていきたいですね。