女性活躍だけでなく、男性がちゃんと家事育児に参加出来るような基盤を作る

株式会社ストライプインターナショナル取締役兼CHO 人事本部長  神田充教さん

宮﨑あおいさんのCMでお馴染みのファッションブランド『earth music&ecology』をはじめ、女性から絶大な支持を誇るアパレル事業を展開するストライプインターナショナル。現在、女性管理職比率が54%に達し、2016年には女性の活躍推進に関する優良事業者として、第一号の認定を受けました。

女性のお客様をターゲットにしているからこそ女性が活躍できる職場作りに力を尽くす。その裏側にある歴史や哲学を、株式会社ストライプインターナショナル取締役兼CHO 人事本部長神田充教さんにインタビューしました。

成功体験を常に否定するということ

ーまず、ストライプインターナショナルの設立の経緯や歴史を教えてください。

代表の石川が23歳の時に、岡山に4坪のセレクトショップ『クロス』を立ち上げたのが始まりです。当時はお客様を選ぶような、奇抜なファッションや高価格帯の商品が中心のセレクトショップでした。しかし社長が東京代官山に進出すると告げた際、社員からは賛同できないという声が多く上がったのです。そこで社長自身、自分が間違っているのではないかと事業の方向性を考え直した結果、これまでとは真逆の、広く受け入れられるようなカジュアルテイストの服をSPAという業態で広げていく路線へ転換しました。こうして生まれたのが『earth music&ecology』です。

ファッションビルや駅ビルだけでなく、当時はほとんど目を向けられていなかった郊外のショッピングセンターに店舗を展開したことが功を奏し、そこから快進撃が始まりました。2007年、ストライプインターナショナルの直営店は100店舗を突破します。更に新しい試みとしてCMも始めました。それまでアパレルでCM展開をしている会社は少なかったですし、社内には反対する見方もありましたが、それでもやってみようと。それが成功して、会社の成長に繋がりました。

ー創業以来大事にしてきたビジョンはありますか。

成功体験を常に否定するということですね。私達はこれまで何度も常識をひっくり返すような決断をしてきました。その裏には、自分がやってきたことを全否定するような決定をしなければならないという代表の強い思いがあります。栄枯盛衰の激しいアパレル業界で、いつどうなるかわからないという危機感が常にあるからです。これまで通りを続けている余裕はなく、それが原動力にもなっています。

2016年に社名を変更したのも、会社がある程度大きくなって社員全体にも安心感が広がってきていると感じたからです。

ストライプインターナショナルという社名には、成功体験を捨て前に進む強い意志と、もっと一人一人個性を伸ばせるような会社にするという決意が表されています。ストライプはヨーロッパのフランスをはじめとした国旗によく使われるデザインです。自由や革新といった意味合いがあり、一人一人様々な個性を持った個人が、自由な気持ちで革新的なことをやっていってほしいという思いが込められています。

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対話を避けないこと

ー女性を事業の原動力にしていく取り組みには、どのような背景があるのでしょうか。

実は、あまり特別なことをやっているという自覚はありません。私達のターゲットとなるお客様はほとんど女性なので、ビジネスを伸ばしていくためには女性が活躍するのが一番だと思っています。社会貢献や社会的責任を果たすのではなく、本当に女性が活躍することによってビジネスが伸びる。その相関関係が他の会社さんに比べて強いので、自ずとそういう形になってきたのかなと。

具体的には、女性が働いていく中でこういう制度があったらいい、こういう環境が出来たらいいという声をひとつひとつ拾い上げて形にした結果、今に至るという感じですね。会社の規模があまり大きくない頃は、社長が直接従業員の声を聞いていましたが、それが難しくなってからは社内満足度調査を行っています。そこで出てきた声を拾って可能なものはちゃんと制度化して、声を聞いた結果こうしました、というフィードバックを行う。そういった対話を避けないことを大切にしています。

生産性の改革は不可欠

ー続きまして、仕事の哲学について伺いたいと思います。神田さんご自身が常に意識していらっしゃることはどのようなことでしょうか。

女性活躍という文脈で言うと、私が意識してることは「いつも機嫌良くしている」、「いつも暇そうにしている」、この二つです。つまり、相談しやすい環境を作ることを大切にしています。立場の上下はそれぞれありますが、職場においては一人一人が周りに対して何かしらの影響力を持っていますよね。その影響力を意識しなければならないと思っています。

私達は小売業ですので、店舗スタッフはいつも機嫌良く笑顔で店に立っています。オフィスに勤めているスタッフも同じような気持ちで仕事に臨むべきだと思っていますし、そういう環境だからこそ、女性がのびのびと仕事ができるのかなと思っています。

ー石川社長の哲学は、どのようなものなのでしょうか。

哲学と言えるかはわかりませんが、社内でよく言っているのは「品格と愛嬌を兼ね備えた人間になれ」ということですね。品格というのはもちろん大事だと思うんですけど、品だけじゃなくて愛嬌のある人になってもらいたいという思いです。

石川を始めとした管理職が意識していることは、部下のために仕事をするということです。先ほどもお話しましたが、常に笑顔で、相談しやすい環境作りを心がけています。その一方で、会社の雰囲気全体が緩まないようKPI(重要業績評価指標)に向かって仕事をすることを徹底しています。たとえば、この事業部は達成すべきKPIがこの3つだから、実現に向けて必要なことは効率よく、必要じゃないことはやるな、という風に。KPIを厳しく追っていくことで、温かい職場でも社員全員が強い意志を持って仕事に向かうことができると考えます。

その中で働きやすさを追求すると、生産性や効率の重要さが浮き彫りになります。生産性はこの二年ほどで非常に意識するようになりました。女性活躍という文脈でもかなり役に立っていると思うのが、定時で業務を終わらせるという点ですね。基本的に残業はせず、6時15分には消灯してみんな帰宅できるようにしているのですが、そうやって枠にはめると、みんなその中でなんとかしようとするわけです。なんとかならなかった場合は、もちろん上司なり役員なりに報告するようにしています。上から見て不要だと思う業務は切るし、人が必要だと判断すれば人員を増やします。

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普通の会社でもよくあることだと思うんですけど、たとえば4時に帰るような勤務形態の社員がいるとします。フルタイムの社員が6時に定時で帰れない状況であれば4時に帰るのはちょっと気が引ける。肩身が狭い思いをすると。でも8時間のフルタイムの社員も6時になったらきっかり帰るというのであれば、別に引け目を感じずにいられるし、今フルタイムで働いている社員が別の勤務形態になったときに安心して働くことができるんですね。

短い時間で働く女性もフルタイムで働く女性も、みんな限られた時間内で最大のアウトプットを出すためにどうするか考えるような働き方をする。それによって、多様な働き方を内包することができると思います。

多様な働き方というと、結婚や出産といったライフイベントを迎える女性に焦点が当てられますし、もちろん私達でも女性活躍推進のためにこういった観点からも色々な改革を進めていますが、本来であれば働き方の多様化は男女に関係ないとも思っています。女性活躍だけでなく、男性がちゃんと家事育児に参加出来るような基盤も作っていきたい。そういった働き方は社会全体で作っていかなければならないし、私達も女性だけではなく、男性に向けての働きかけも必要だと考えています。

自分らしい装いでもって働き続けられるように

ー最後になりますが、社内の方を含めて、世の中の活躍している女性、活躍しようと頑張っている女性の方々に、メッセージを頂けたらうれしいです。

先ほどの話と重なるのですが、サステイナブルな働き方が大事だと思います。女性が活躍できる社会は、戦闘服を着た「男性社会の中で頑張ります」というようなキャリアウーマン型の人が切り開いてきました。これからはそういうタイプの働き方だけじゃダメだと考えています。私達としては、バリキャリでもゆるキャリでもどちらでもいいんです。ひとりの人の一生をとってみても、バリキャリ的に働く時期もあればゆるキャリ的に働く時期もある。ライフステージやその時々の考え方に応じてサステイナブルに働けるような、しなやかな働き方というか…服でいうなら、戦闘服ではなく自分らしい装いでもって働き続けられるようにしてほしいですね。

そしてそれは男性も同じです。人生良いときもあれば悪いときもありますよね。仕事を頑張らないといけないときもあれば、それどころじゃないときもある。どういったときでも、自分なりの働き方を見つけて、長くサステイナブルに働いていくということが本当の意味での女性活躍だと思うので、あまり肩肘を張らずに、頑張りすぎないでほしいです。