“Be Yourself”あなた自身をそのまま出せばいい、それがイノベーションになり会社の力になる

ユニリーバ・ジャパン取締役 人事総務本部長  島田由香

世界最大級の一般消費材メーカーであるユニリーバ。その日本法人であるユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社の取締役、人事総務本部長である島田由香さまにお話を伺いました。

世界190ヶ国の人が、幸せや満足感を感じられるように

ーまずは、ユニリーバという会社について教えてください。

私たちは、製品を通じてよりよい明日を創ることをビジョンにしています。だから「ユニリーバ」という社名ではイメージがわかなくても、「ラックス」「ダヴ」そして紅茶の「リプトン」などのブランド名をお伝えしたら、何の会社なのかわかっていただけるのではないかと思います。

現在事業展開しているのは190カ国。国連加盟国が193ヶ国ですから、文字通り世界中で商品をご提供しています。ひとつとして同じ国がない中で、私たちの製品がそれぞれの国の方に気に入っていただけているのは、ユニリーバのビジョンに関係があると思っています。我々は商品が飲み物であってもパーソナルケア製品であっても、「飲んでいると豊かになる」「使っていると幸せ」という気持ちをお届けしたいと考えています。商品を手に取ったとき使ったときの幸せや満足感を追求することが「よりよい明日を創る」ことにつながると考えています。

ー創業の当初から、このような想いがあったのでしょうか。

今から133年前、1884年に英国でリーバ卿が石けん会社を始めたのがユニリーバの始まりです。当時の英国は衛生状態が悪かったので、そのために命を落としてしまう人たちが沢山いました。だから、リーバ卿は「ポートサンライト」という場所で「サンライト」という石けんの製造・販売を始めたんです。石けんで手を洗うという習慣は、ここから来ているのだと言われています。

石鹸のように小さなものにも、暮らしを変え、よりよい明日を創る力があるという創始者の信念は、今もユニリーバのビジョンに受け継がれています。消費財とはとても小さなものなんです。でも、現在1日に少なくとも1回、20億人の人たちが私たちの製品を使ってくれていて、その1回の体験で幸せになってもらえたり、わくわくいきいきしてくれたりしたら、20億の幸せが生まれることになる。それが1日3回になったら60億になる。そういう幸せが毎日どこかにあったらいいな、という気持ちは私たちの中に根付いているんです。

ー商品提供以外にもビジョン実現に向けた取り組みを行っているのですか?

例えば「ダヴ」というブランドは「リアル・ビューティ=本物の美しさ」ということをスローガンにしています。ダヴでは「大好きな私~Free Being Me」というプログラムを行っています。これは1時間半くらいゲームをしていくと、始める前と終わった後で「自分のことが好き」と思えている度合いを上げるためのプログラムなんです。

実は日本の中学生・高校生は、世界で見ても自己肯定感が非常に低いというデータがあるんですね。ダヴの製品を使うことで、肌がキレイになったり美しくなることによって、女の子の自己肯定感を高めていってもらうことを大切にしています。

 

 

男性も女性もLGBTも、ユニリーバでは当たり前

ー女性の活躍については、どのような思いをお持ちでしょうか。

女性ならではの強みというものは確かにあると思います。女性が集まると、知らない人同士でもすぐに打ち解けられるところがある。いろいろなことをシェアしたり、他の人と交流したりすることを楽しめたり、臆することなくアイディアを出せる存在だなと思うんです。

これまでの企業では、男性が作ってきた文化が色濃い部分が多かったわけですよね。それは歴史的に仕方がないところもある。その中に女性が入っていったときに、なかなか強みを出しにくいという問題があって、そのためにサポートをしていってあげようというのが女性の活躍を支援していこうという一般的な大きな流れだと思うんです。

ユニリーバは消費財を扱っている会社なので、昔から女性のアイディアを商品開発に生かしたり、女性の感性を意識したブランドコミュニケーションを行ったりといったことが力になって大きくなってきた会社なんですね。男女雇用機会均等法よりもずっと前から女性も多かったそうですし、その当時から産休・育休を取ってまた仕事に戻ってくる人がほぼ100%だったそうです。

ーそれはすごいですね。女性の活躍をさらに促進するような取り組みもされているのでしょうか。

実はユニリーバは、そもそも性差やジェンダーはあまり関係ないという考え方なんです。男性だったり女性だったり、いわゆるLGBTと呼ばれるような人であったりしても、それはたまたま。社内ではもう当たり前なんですよね。

ユニリーバのロゴは、25種類の別々の要素が集まって「U」の形になっているものです。これがユニリーバの考えるダイバーシティのあり方そのものだと思っています。その人の良さや特長や個性をそのままに、ひとつになっている。イノベーションっていうのは、やっぱりダイバーシティがないと出て来ないんですよね。考えの全く同じような人だったら、新しいアイディアなんか出て来ない。だから誰かになるとか、自分を変えるとか、そんな必要はなくて、その人が持っているものをそのまま出せばいいんです。それがイノベーションになり、会社の力になり、利益をもたらし、社会に貢献している。

ある企業でどれくらい女性が力を持っているかを測るのに、女性マネージャー比率はよく見られますよね。グローバルな指標は50%です。当然、理論上男女どちらかということになりますから。今、ユニリーバは33%になっています。50%にはほど遠い、と言われることもあるのですが、特別な取り組みをしようとは思っていません。自然にそうなればいいんじゃない?と思っています。それは男性とか女性とかではなく、その人の持っている個性と、その個性が集ったときのダイバーシティこそが大切だと思っているからです。2016年7月から始めた新人事制度の「WAA」もユニリーバがダイバーシティこそが大切で、重要な経営戦略の一つと位置づけているために導入が決定しました。

ー「WAA」について教えてください。

「WAA」(Work from Anywhere and Anytime)は、すべての社員が自分らしく働くことを支援し、働く場所・時間を社員が自由に選べる制度です。「上司に申請すれば、理由は問わず、会社以外の場所で勤務できる」「平日の6時~21時の間で自由に勤務時間や休憩時間を決められる」「全社員が対象で、期間や日数の制限がない」といった内容になります。

すべての社員が自分らしく働きながら、一つのチームとして最大限能力を発揮することが、ビジネス成長の基盤と考えているんです。ビジネス成長に必要になってくる新しいアイデアは、毎日オフィスにずっといたところで何も湧かないだろうし、自分のエネルギーの使い方は自分がわかっていると思うので、だったら自分の好きなように強みを最大化しながらやってほしい、という考えの元にWAAは運用されています。

WAAの今後の展開として、例えば、1ヶ月5時間しか働いてなくても結果をちゃんと出しているんだったらOKというような極端な例がでてきても良いと思っています。そのために評価や結果について定義について順を追って整備していく予定です。

必ず5分前行動の人と、30分遅れても平気な人が一緒に仕事できる理由

ー仕事の流儀や哲学として、大切にしていることはありますか?

私は「これは仕事!」「これはプライベート!」みたいな区分けがないんですよね。だから人生において大事にしていること、という感じなのですが…やっぱり「笑顔」。これがすごく大事です。笑顔って、自分が本当に嬉しくなかったり楽しくなかったら笑顔にならないですよね。逆に嬉しい、楽しいと感じているときに笑っていない人というのはいないわけです。一見そうでないように見えても、小さくニヤッとしてたりとか、目は笑っていたりとかね。

仕事をしていてても、何をしていても、笑顔で1日いられるかどうか。もちろん、そうじゃない瞬間もありますよ。でも、何をどうしたらそれが笑顔に変わるのだろうという視点で見ていくと、ソリューションはいくつもある。気持ちの切り替え方もそうだし、アプローチを変えてみるとかね。単純なことでいうと、人の笑顔を見ているとこっちも笑顔になりますよね。笑いって伝染するから、誰かが笑顔だったらそれは伝わるし、笑顔の人と働きたいじゃないですか。だから「チームが笑顔かな?」とか「暗く沈んでいないかな?」というのはすごく見てますね。

ー確かに、島田さんは笑顔が素敵ですね。他に仕事でこだわっていることはありますか。

特に仕事、ということで言えば「目的をはっきりさせる」っていうことかな。何をやるにしても「目的は何か」「何のためにやるのか」ということを、自分でも部下にも確認するようにしています。

作業というのはひとりでできるんです。でも、仕事は絶対にひとりではできません。そうなると、必ずチームで当たることになるし、チームがあれば人間関係が生まれます。そのときに、190ヶ国もの違う国で展開していると、やっぱりいろいろ起こるわけですよ。時間の感覚ひとつ取っても、必ず5分前行動の人と、30分遅れて来ても全然平気な人がいたら、ものすごくストレスですよね。言葉も違うし、育ってきた環境だって違うし、意見の対立もたくさん起きる。

でもそんな違う文化の人たちがどうして一緒に働けるのかというと、「目的は何か」ということがちゃんとシェアされているからだと思うんです。いろいろあっても「ちょっと待って、何のためにやってるんだっけ? これをやるためだよね!」「じゃあ、こっちを向いてやろう」「じゃあ、お互いリスペクトしよう」「じゃあ、これは許し合おう」「じゃあ、これは外せないよね」という風にチームのファシリテーションが自然に起こっていくんです。

だから「やらされ仕事」は絶対にしない。今やっていることが何に繋がっているのかわかってやっているのと、何もわからずただやらされているだけだと、全然違いますよね。頼まれた仕事でも、自分の中でやる意味が納得できていれば、すごいチャレンジができるものなんですよ。

「枠」ではなく「ワクワク」を考えようよ!

ー最後に、読んでいる方にメッセージなどありますでしょうか。

私は仕事柄色々な方とお会いする機会をいただいています。土日に中高生のキャリア教育もやっていたり、大学生には採用でも接しますし、もちろん自社には新入社員もいます。会社の中にもいろいろな年齢の人もいますし、講演に行けば本当に幅広い方がオーディエンスとして来てくださっている。

そんなさまざまな年齢層の方と接する中で、20代から30代半ばの女性は、キャリアに対して「もやもや」していることが多いんじゃないかなと感じるんです。でもその「もやもや」を大切にして欲しいと思っています。なぜかというと、それって「本当はこうしたい」ということがあるのに、そうできないことへの葛藤なんじゃないかなと思うんですね。アクセルを踏んでいきたいのに、ブレーキも踏まなきゃいけない何かがあって、それでもやもやしてしまう。だからこそ、もやもやしているときは、本当に自分がやりたいことに気づくチャンスなんです。

やっぱり女性は社会的に期待されている役割に縛られてしまいやすいんですよね。自分の経験でもそうですが、「良い妻でいなきゃ」とか、「とはいっても働かなきゃ」とかね。

 

ー「~すべき」「~せねばならぬ」というのは強いですよね。

そう、そうなんです。日本の教育は特にそうで、すぐ枠を作るんですよね。だから私はいつも、こう言っているんです。「枠」じゃなくて「ワクワク」を考えようよ!って。人間、自分を枠にはめていることに気づいていないこともあるんですが、そういった枠がブレーキになってしまう。でもアクセルの方に意識を向けることが私は大事だなって思っているんです。ワクワクすることの方を考えて欲しいんですね。

そのためには、まず自分の強みを知る。もともと、小さな頃から得意だったことだってあるはずだし、自分のいいところっていっぱいあるんですよ。だから自分を卑下したり、他人と比較して自分の価値を下げたりすることなく、自分の強みをもっと見つけて、ワクワクすることの方に向けてアクセルを踏んでいって欲しいですね。